タンスの話。


最近のはちくんとあおちゃん。
あおちゃんはうら若き女のコですが、
ノルウェージャンフォレストキャットという
大型家猫種(ΦωΦ)。
骨太の堂々たる体躯で男の子のはちくんを圧倒。
このような光景は、人間界でも良く見掛けますが…
暑くなってきたので、
呼吸器に問題あるあおちゃんには辛い季節。
無事に暑さを乗り切れるよう、心を尽くします。

さて、タンスの話。
先日、親世帯の掃除と衣替えをしていた時。
このタンスの上の段は何が入っているの?と、娘。
ああ、そこにはおばあちゃんの着物が入っているのよ。
そうね、虫干ししたほうが良いかなあ、
おばあちゃんも、なかなか自分では虫干し出来ないから。
へえ、おばあちゃんも和服持っているんだ、着ないよね。
どんなのがあるか見たいな。
そう言って娘が引き出しを抜こうとして。
ぎし、ぎし、ぎし、ぴし、ぴし、ぎし、ぎし、ぴし。
かなり大きな音。引き出しはなかなか抜けない。

ああ、暫く開けていなかったのかな、
湿気てしまっているのねきっと。
そう。そう言わなくては。
まさか、娘に
「いや参ったなあ、このタンスはラップ音がするよ。」
とはさすがに言えない。
虫干しはまた今度にしましょ、と言って
タンスの観音開きの扉を閉める。ぎし。ぴし。
まあ、暫くは封印よね。仕方ない。

大抵の女性は着物が好きで、
だから和服には持ち主の思いがこもりやすい。
それを「念」と言う人も多いけれど、私は余り念とは言わない。
良き思いは、念とひとくくりにしたくはないので。
でも、執念になったらそれは別物。

まだ若い時に、茶道の師匠のお手伝いをした時に
和服を畳んでタンスにしまって、と言われた事がある。
畳んだ和服をしまおうと、タンスの引き出しを開けたら。

ギシギシ、しなって開いた引き出しに、「顔」が入っていた。
え?かお?顔?顔だけ?
その顔は女性のようで上向きで目を閉じていて、
青白かった。
目が開いたら、こっちを見たらどうしよう!
思わずばたん!と引き出しを押し込める。
何をしているの、乱暴ね、タンスが壊れてしまうじゃない!
師匠に怒られて、震えながらもう一度、引き出しを開ける。

もう顔は無い。
和服が詰まった普通の引き出し。
和服をしまい、そっと閉めて、意を決して他の引き出しを開けてみる。
するする開く。和服が詰まっている。顔はどこにも無い。
目の錯覚だったのね。
ギシギシ言わないし。

その時はそれで済んだ。
私も、忘れてしまった。
でも、3年ほどして、また師匠に和服のたたみを頼まれた。
ちょっとイヤな思い出がよみがえる。
でも、違う段を開けるからきっと大丈夫。
ギシギシ。ギシギシ。ぴし。
音がして、また顔が出てきた。
今度は今にも目を開きそうだったので、
ぴしゃん!と慌てて閉めて、また師匠に怒られた。

何をしているの!
そこに入っている唐獅子の刺繍丸帯は
私の師匠が一番大事にしていたものなのよ。
形見分けでやっと、もらったものなんだから!

ああ、そうなんですね。
大変失礼致しました。和服には女の思いがこもりますから。
(分けたくなかったのかしら。たぶん。)
大事に、しないとならないですよね…

今のタンスと違い、昔のタンスは一本物だったりして、
長く受け継いで、大切に使うものでした。
そこに、大事な和服をしまい、思いもしまい。

だから、虫干しはきちんとしたほうが良いのかも。
タンスの不思議なお話でした。
お宅のタンスは大丈夫ですか?
ギシギシ、ぴしぴし鳴らないですか?