鍾馗様(しょうきさま)


新緑が美しい季節になりました。

長いお付き合いの、素敵なセレブリティのクライアント様宅に出張してきました。
ご本人さまのご体調、ご家族さまのご事情で、学芸大学までおみえになるのがちょっと難しく。

優しい笑顔で迎えて下さったクライアントさん、
「あのね、鶴見さん。
最近、夢に舅、姑、義祖母が出てきてね。
何か言うんだけどわからなくて。」
「まあ、オールスター勢揃い、ですね。」
「そうなの。
でも、鶴見さんに連絡して、
来てくださる事が決まったら、
ぴたっと夢に出なくなったんだけど。」

…そうですか。
「通訳」が来る事になったから、ご安心なさったのかもしれないですね。
それでは、どうして夢にお出ましになられたのか、リーディングしてみますね。

リーディングしてみたところ、
最近、ご結婚なさったご長男さまが、
親御さん(セレブリティなクライアントさん)に内緒で、一軒家を購入契約。
その契約日に事情を知ったクライアントさんご夫婦、
びっくりしたけどまだ若い二人、
大変だからと頭金をご援助。
なんとお優しい!

「いえね、主人は長男夫婦と同居したがっていたのだけれど。
でも、私も嫁入りしてずっと同居してましたから、
お嫁さんの気持ちもわかりますし。」
はい、そうですよね。
私も嫁入りしたからわかります。
でも、どうもその件に関して、
舅、姑、義祖母さまはご一言おありになるようです。

リーディングとはいえ、リアルな説教が出るわ出るわ。
いや、私は正直、人霊は専門外なんですが。
みられないわけではないですが、このようなシチュエーションになるのが大変、苦手なので。
でも致し方ございません、僭越ながらお伝え申し上げます。
クライアントさん、頭を垂れてはいはい、ごもっともです、と頷く。

でも、舅さまたち。
ご説教ばかりではなく、ご心配もしているご様子。
それでは、若夫婦が購入なさった「家」をリーディングしてみましょうね。

ありゃー。これは困りました!
本当に申し訳ございません、
この新居は私のリーディング史上でも五本の指に入るかも、くらい最悪でございます。
いや、本当に申し訳ございません、
何かフォローしたいのですが、
本当に何もフォロー出来ないレベルの物件です。
出来れば、住んではならない。
それを、祖霊さまがたは、お知らせしたかったのかと思います。

クライアントさん、うなだれて、
「でも鶴見さん、止めようがないわ。
もう、来月には建って移り住むそうなのよ。
私も何か、悪い予感はしたのよね。」
うーん、そうですよね。
ここで止めたら、親子関係、嫁姑関係、最悪になりますよね。
でも、優しいクライアントさんに、
「いやー、ほっときましょ。
バチが当たればわかりますよ。きっと。」
とは、流石に言えない。

涙ぐんでいるクライアントさん、
「鶴見さん、せめて何か、
あの子の御守りになるものは無いかしら。
もちろん、インテリアの趣味があるから、
お嫁さん、インテリアこだわりがあるから、
何か渡したからと飾るとは思えないけど。
でも、何か少しでも。鶴見さん。」

うーん、と言いながらリーディング。
あ。
「すみません、息子さんの節句に、
しょうきさまを飾っていないでしょうか。」
「あ、あります、あります。
実は鶴見さん、まだ息子が小さい時に、
何かあったらしょうきさまが守ってくださる、と仰っていましたよ。
たまに、がしゃんがしゃんと、
太刀がぶつかる音をたてて、家の中を歩くかもしれないけど、
怖がらないでね、と仰っていました。
で、たまに、がしゃんがしゃんいってました。」

……そうでしたか。
言った本人、けろりと忘れていました。
すみません。でも、良かった。
息子さんに、しょうきさまを必ず、渡してくださいね。

「はい、必ず。
あ、そうそう、
まだしょうきさまを飾ってあるんです。
見ていってくださいませんか?」

はい、喜んで。
是非、ご挨拶させてくださいませ。

そして、節句飾りがある和室に招かれる。
摺り足でしょうきさまの前に寄り、
よろしくお願い申し上げます、とご挨拶。

途端に、部屋に響くどーん、という大きな音。
地震かしら、と思うような揺れ。

まあ、大きな家鳴りでしたね。
と、にこやかに挨拶をして、
それでは、と私は学芸大学オフィスに向かいました。

しょうきさま。
どうぞ、よろしくお願い申し上げます。
しかし、クライアントさんのお宅をでた途端に、
バケツをひっくり返したような集中豪雨、びしょ濡れ。
ご快諾頂けたのかしら。
良かった。